【出場選手インタビュー】上杉海斗プロ

今回の大会はプロとジュニアの団体戦ですが、上杉さんがプロになられたきっかけや団体戦 の経験についてお聞きしたいと思います。学生時代からテニスの強豪校でプレーされていたと思いますが、団体戦についてはどうですか?

「得意苦手とかは無いですけど、団体戦の方が好きでした。 激しく応援してもらったり見てもらった方が自分も燃えて、頑張れます。」

団体戦には、自信はあるって感じですね?

「自信があるかと言われると…(笑)。調子が良くなるかどうかは、何とも言えないですけど、とにかく頑張ります!」

今回はプロ同士のダブルスと、プロと学生で組むダブルスがあります。個人的には上杉選手はダブルスのイメージが強いですが、ご自身の中でシングルスとダ ブルスで優先順位や意識はありますか?

「もともと僕はダブルスっていうテニスじゃなくて、シングルスでガンガンいくタイプだったんです。大学に入ってダブルスもしっかりやるようになったり、プロになっても、どちらかというとダブルスの方が戦績が出やすかったので、ダブルスに力を入れるようになりました。練習もシングルスとダブルスが半々くらいの意識でやっていました。ダブルスでチャレンジャー等グレードの高い大会で先に上位に食い込んで、シングルスも入れたら単複やりたいと常に思っています。まぁ、直近ではダブルスがほぼメインになっていましたね。」

シングルスも、頑張りたいという意識はありますか?

「もちろん、頑張りたい気持ちはあるんですけど、怪我の影響で去年からシングルスのランキングが完全に無くなってし まったので…。ダブルスで上を目指せるのであれば、ダブルス優先でいこうかと考えています。日本のプロ選手はほとんどがシングルスプレイヤーで、松井さん(俊英選手)以外はあまりいないですし、新しい道を作るというか、そっちで目指していきたいと思っています。」

大学に入ってからダブルスの実力も伸びたと仰られましたが、それは何かきっかけがあったのですか?

「大学は人数が多かったので、ダブルス練習をする機会自体が多くなりました。これをしたから上手くなっ た、という事はなくて、とにかく練習量の結果ですかね。周囲に強い先輩や後輩が多かったので、良い影響を受けたところもあります。本当に良いメンバーが多くて、仲間に恵まれていました。高校では矢多弘樹(現三菱電機)とダブルスを組ませてもらって、彼がダブルスで色々考える人で、色々教えてもらったりしてダブルスの考え方も変わりました。その経験は、そのまま大学で活かせたと思っています。

団体戦って、ダブルスが盛り上がりますよね

「そうなんです、ダブルスの方が勢いがあったり、大学のリーグ戦ではシングルスより先に試合に入るので、盛り上げることを意識してました。」

学生時代に、プロの選手と組んだことはありましたか?

「3年生の時に仁木さん(拓人選手)にお誘いいただいて、フューチャーズで初めて優勝できました。仁木さんはトップの選手なので、最初に声をかけていただいたのは凄く嬉しかったんですけど、それまであまりお話ししたこともなかったのですごく緊張しました(笑)」

事前の作戦とか、リターンのサイドとかはどうやって決めたんですか?

「試合前の練習でフィーリングで決めました。当時は僕もそんなにバリバリのダブルスって感じでもなかったので、その場で決めるって感じでしたね。どっちのサイドをリターンで担当するかは、組む人によりますね。どっちでもいいよって人も結構多いんですけど、僕の場合はアドサイドが多 かったので、ペアがどっちでも良かったら僕がアドサイドにいきます。最初にお互いに得意なサイドを聞いて、話し合って決めていますね。」

いざ組むとなると、細かい作戦を決める時間もあまり無いですよね?

「固定で組んでいくとフォーメーションや戦略を話したりしますが、当時は特定の選手と頻繁に組むわけではなかったので、戦略的な部分はあまり話す時間がないですね。 去年から松井さん(俊英選手)と組ませていただいて、松井さんとは色々話して二人でダブルスを作っていく、という意識でやらせてもらっています。」

色々な方と組むよりは、ある程度決まった方と組む方がやりやすいですか?

「元々ペアを固定してという感じではなかったので、色々な人と組んでみたいと思ってプロの最初の2年間はやっていました。松井さんと大会に出始めてからは、間違いなく固定でやらせていただいた方が良いと感じています。」

今回松井選手は相手チームですが、普段どういう感じで作戦など考えているのですか?公開できる範囲で、聞かせてください

「作戦と言いますか、自分達が活かせるフォーメーションやポジションについて重点的に話しています。戦略的な部分というより、自分達のテンションだったり、序盤の声かけや、お互いに押している時の声かけとか、場面場面でこうしていこうというところをペアで練習する時から話し合ったりしています。
結構、細かいところまでポジショニングにこだわったりもしてますね。」

最近は雁行陣で打ち合う男子ダブルスも多いですけど、お二人は前で戦うというイメージがあります

「そうですね、僕達は前を取って戦うのが基本という感じです。シングルスを主戦場でやっている選手は、下がって打つのが好きな人が多いかもしれないですね。」

前で戦うプレーを、ぜひ今大会でも見せていただきたいです!

「はい!頑張ります」

今大会では、学生と組むダブルスに出場される可能性もあります。ペアの学生に求めるものや、意識し てほしいポイントはありますか?

「この大会でプロと学生が対戦するカードはミックスダブルスだけになると思うので、緊張するとは思いますが、思い切りやって自分がどこまで通用できるかを楽しんでやって欲しいと思います。こういう機会はめったに無いので、伸び伸びとやってもらいたいと思います。偉そうに言って、僕も緊張しそうですけど(笑)」

逆に上杉さんも緊張しますよね?

「自分がミスれないとか(笑)そうですね、頑張らないと。シングルスのランキングは下がってしまっていますが、シングルスとダブルスは違うんだよ、というところを頑張って視聴者のみなさんにも見せられたらと思います。」

今回出場する学生選手はみなさんプロ志望ですが、上杉選手ご自身がプロの道を意識されたのはいつ頃ですか?

「僕自身は、就職活動をするかどうかという頃まで悩みました。大学3年生の時ですね。 正直元々そこまでプロ志望ではなくて、ここまでやれるとは思っていなかったのですごく迷ったんですけど、監督やコーチや家族と話して、今しかできないかなと思って決断しました。」

実際に、プロテニス選手になってみてどうですか?

「大学のようにホームコートもない環境で、ご自身でやらないといけない事が増えたと思います。移動から何から全て自分一人で色々な所へ行ってやる、というのも含めてプロだと思っていて、僕はそっちの面でやれるかどうか心配でした。テニスだけであればプロでやりたいという気持ちはあるんですけど、一人でトレーニングして、ホテルやその他色々を自分で手配して…というのが、一人で出来ないと思っていたので(笑)。テニス以外の面での不安が、すごく大きかったです。 それでなかなか自分自身決断できなかったんですけど、プロになってみて、同じ大会に出ている日本人の選手同士で助けてもらったりしていくうちに、不安だったところを思ったより楽しめるようになってきたと思います。正直しんどい事は多いですが、色々な国に行って頑張るっていうのは、過酷ではあるんですけどそういう経験はなかなかできませんから。そう思うと、単純にめちゃめちゃしんどいな、とはならなくて。考え方が変わりましたね。まぁ、無理矢理変えた部分もありますけど(笑)」

今回の大会は久しぶりの試合になると思いますが、今のお気持ちはどうですか?

「期待と不安が、半々くらいですかね…。まずは、怪我せずにできたらと思います。」

今大会ではプロ志望の高校生・大学生が参加しますが、学生時代にこういう事をやっておけば良かった、というメッセージがあればお聞かせいただけますか?

「自分がプロになってすぐに怪我してしまったので、一年間試合を周れる身体作りをしたり、自分の身体の事を早いうちから知っておく事が大事だなとすごく思っています。 技術の面でチャレンジする事はもちろん大事ですが、若いうちから自分の身体を知る事も大事ですし、鍛えることもすごく大事だと思います。怪我をして試合に出られないのは、プロとして一番苦しいです。怪我は経験しなくても良い事なので、ここが弱いのでしっかりケアしようとか、この筋肉が硬いとか、人によって違う部分を早く知って、身体作りをするのが良いと思います。これは自分がプロになって、一番痛感していることです。」

松井選手も記者会見で同じように「身体を鍛えておけよ」と仰っていました

「松井さんの言葉の方が、だいぶ重みがありますね(笑)。どうしても、ジュニアや学生は技術的な練習の方が多い印象ですが、僕は実は高校2年生まで全国で一回も勝ったことがなくて。大学でも1年目はインカレも初戦負けで、学生室内は予選落ちでした。プロになるためには戦績が必要だと思って、目先の大会に勝つためだけのテニスになってしまうと、プロになってからすごく苦労することもあるかもしれない。プロになると決めているなら、目先の負けもそんなに気にしなくてもいいのかなと個人的には思います。インターハイは無くなってしまいましたが、インターハイで優勝したからといって…優勝はもちろん凄いことですが、プロになったらそれほど関係ないのかなとも思います。」

戦績がないとプロになれないとか、スポンサーが付かないと思っている方が多いと思います

「スポンサーはもちろんプロで活動するには大切ですけど、実力が付いてくれば自然と必ず付いてくれると思います。僕は元々強かったイメージを持たれがちなのですが、この大会に出るプロ選手のようにジュニアの小さい頃からずっとエリートで注目されていた選手ではありません。僕のような、這い上がったプロ選手もいるということを、知ってもらいたいです。」

私の勝手な印象かもしれませんが、上杉選手のテニスはアグレッシブで特徴のあるテニスのような気がします

「僕はそうしないと勝てない、と自分で分かっているのでそれを貫いてやってきました。でも、アグレッシブに打ってもジュニアの時は全然入ってなくて、ほとんど自滅で負けるタイプだったんです。それが少しづつ入るようになってきたら、一気に勝てるようになって…。今まで勝てなかっ た人に勝てるようになり、自信になりました。 でも、目先の一試合に勝つために打たずに入れにいったりになってしまうと、今の自分は無かったでしょう。ジュニアは繋いでいる方が強いイメージはあり、実際そうなりがちですが、ぜひもっとチャレンジして欲しいです。 プロ選手の練習を見ていると、毎年違った事にチャレンジしています。トップの人で、勝っている人でも何かを変え続けているので、そこは本当に凄いなぁと感じます。」

最後に、上杉選手のこれからの抱負を聞かせてください

「この大会に出ているプロ選手に早く追いつけるように、トップの選手と同じ土俵に立てるように、常 に上を見て頑張りたいと思います。 僕は試合を楽しみたいタイプなので、もちろん勝つことも大事ですが、見て楽しんでもらえるよ うなプレーをしたいと思っています!」

上杉海斗 Kaito Uesugi / 江崎グリコ所属
ATPランキング自己最高ダブルス363位(2018.10.1)
1995年6月2日生 180.5cm/75kg
大阪府堺市出身 清風高-慶應義塾大
ユニバーシアード(台湾)混合ダブルス優勝 / アジア大会(ジャカルタ)男子ダブルス・混合ダブルス3位 / 全日本テニス選手権混合ダブルス優勝

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